
「今月、最低何杯売れば赤字にならないのか」
この質問にすぐ答えられる経営者は、実は多くありません。
損益分岐点を知らないまま営業を続けると、「なんとなく頑張る」という状態から抜け出せなくなります。
この記事では、BARの損益分岐点を自分で計算できるようになるための公式と、
実際のシミュレーションを解説します。
目次
損益分岐点とは何か
損益分岐点とは、「売上と費用がちょうど一致して、利益も損失もゼロになる売上水準」のことです。これより売上が多ければ黒字、少なければ赤字になります。
「損益分岐点を知る」ことの意味
損益分岐点を知っていると、「今月はあと何杯売れば赤字を避けられるか」「今のペースで黒字を維持できているか」が即座に判断できます。感覚で経営するのではなく、数字に基づいて判断できるようになる。これが損益分岐点を計算する最大の価値です。
損益分岐点の計算式
損益分岐点の計算には3つの数字が必要です。難しい会計知識は不要で、自分のBARの数字を当てはめるだけで計算できます。

3つの数字の意味
実際に計算してみる:3つのシナリオ
シナリオ①:標準的な一人営業BAR
固定費(家賃・光熱費・人件費等) 30万円
変動費率(原価率) 25%
計算式
30万円 ÷ (1 − 0.25)
損益分岐点売上
40万円
このBARは、月40万円を売れば赤字も黒字もない「ゼロ」の状態になります。
40万円を超えた分から、利益が出始めます。
シナリオ②:固定費が高い物件(都市部・広め)
固定費 50万円
変動費率(原価率) 25%
計算式
50万円 ÷ (1 − 0.25)
損益分岐点売上
約66.7万円
シナリオ③:原価率を改善した場合
固定費 30万円
変動費率(原価率) 20%
計算式
30万円 ÷ (1 − 0.20)
損益分岐点売上
37.5万円
原価率5%の改善で損益分岐点が2.5万円下がる
シナリオ①と③を比較すると、原価率を25%から20%に改善するだけで、損益分岐点が40万円から37.5万円に下がります。「少ない売上でも黒字になりやすい」体質になるということです。原価率の改善は、売上を増やすことと同じくらい経営を安定させる効果があります。


損益分岐点を一度計算すれば、その後の経営判断が格段に速くなる。
損益分岐点を「杯数」「客数」に変換する
「40万円」という金額だけだとイメージしにくいので、実際の「杯数」「客数」に変換してみます。これが現場で最も実感しやすい使い方です。
損益分岐点を「杯数」に変換
損益分岐点売上 40万円
客単価(1杯あたり) 1,200円
計算式
40万円 ÷ 1,200円
必要杯数
約334杯/
損益分岐点を「客数」に変換
損益分岐点売上 40万円
客単価(1人あたり) 4,500円
計算式
40万円 ÷ 4,500円
必要延べ客数
約89人/月
「1日あたり」に分解するとさらに実感が出る
月89人が必要なら、営業日が月20日のBARでは「1日あたり約4.5人」が損益分岐点です。「今日は5人来たから黒字ペース」という実感的な判断ができるようになります。
安全余裕率:損益分岐点からの距離を見る
損益分岐点を知ったら、次に「今の売上が損益分岐点からどれだけ離れているか」を確認してください。これを「安全余裕率」と言います。

安全余裕率のイメージ(実際の売上70万円・損益分岐点40万円の場合)
実際の売上:70万円
紫の境界線(損益分岐点40万円)を超えた分が安全余裕。この場合の安全余裕率は約43%。
| 安全余裕率 | 評価 |
|---|---|
| 40%以上 | 非常に安定。多少の売上減でも耐えられる |
| 20〜40% | 健全な範囲。一般的なBARの目安 |
| 10〜20% | やや不安定。売上減少に注意が必要 |
| 10%未満 | 危険。わずかな売上減で赤字転落のリスク |
損益分岐点を下げる3つの方法
損益分岐点を下げて経営を安定させる方法
損益分岐点が下がるほど、経営の「自由度」が上がる
損益分岐点が低いBARは、客が少ない日があっても慌てる必要がありません。逆に損益分岐点が高いBARは、毎日多くの客を集めなければ赤字になるという緊張感の中で経営することになります。固定費・原価率を見直すことは、心理的な安心感にも直結します。
開業前に損益分岐点を計算する重要性
損益分岐点は、開業後だけでなく開業準備の段階でも必須の計算です。
「現実的に達成可能な損益分岐点か」を必ず検証する
計算した損益分岐点の売上・客数が、自分のBARの席数・営業時間で本当に達成可能かを検証してください。「1日10人来ないと赤字」という損益分岐点なのに、席数が8席しかない。というような無理のある計画は、開業前に見直す必要があります。
損益分岐点チェックリスト
この記事のまとめ
- 損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 − 変動費率)。この公式さえ覚えれば自分で計算できる。
- 固定費30万円・原価率25%のBARなら、損益分岐点は約40万円。これが「赤字も黒字もないライン」。
- 損益分岐点を「杯数」「客数」「1日あたり」に変換すると、現場で実感しやすくなる。
- 安全余裕率20〜40%が健全な目安。10%未満は売上減少に弱い危険な状態。
- 損益分岐点を下げる方法は「固定費削減・原価率改善・客単価向上」の3つ。
- 開業前にも損益分岐点を計算し、現実的に達成可能かを必ず検証する。
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