BARの原価率の考え方|利益を残すための基本知識

「売上はそこそこあるのに、手元にお金が残らない」
この悩みの多くは、原価率のコントロールができていないことが原因です。
原価率は「知っているつもり」で実は正確に計算していない人が多い指標です。

この記事では、BARの原価率の正確な計算方法・適正値・改善方法を、
現場で使える数字とともに解説します。
読み終えたら、今夜のメニューの原価率を計算してみてください。

原価率とは何か|正確な定義

まず「原価率」の定義を正確に押さえます。曖昧なまま進むと、計算結果が全てズレます。

ここでいう「原材料費」はお酒・ミキサー・ガーニッシュ・氷など、1杯を作るために直接使った材料費の合計です。人件費・家賃・光熱費は含みません。これらは「固定費」として別で管理します。

「なんとなく安く仕入れているから大丈夫」は危険

仕入れ値が安くても、提供価格が低すぎれば原価率は高くなります。逆に高単価のウイスキーでも、適切な価格で提供すれば原価率は抑えられます。大切なのは「原材料費と売価の関係」を正確に把握することです。

BARの原価率の適正値

BARの適正原価率は「20〜30%」とされています。これは一般的な飲食店(30〜35%)より低い傾向があります。その理由は「お酒は食材より原価が抑えやすく、空間・技術・接客という付加価値で高単価を実現できる」からです。

メニュー別・原価率の計算方法

実際に計算してみます。面倒に思えますが、一度やれば感覚がつかめます。

計算例①:ジントニック(販売価格 1,200円)
スタンダードカクテル・最も注文頻度が高いメニューのひとつ

1.ジン(タンカレー)45ml
※750ml/3,000円
約180円
2.トニックウォーター 1缶(業務用)
約55円
3.ライム 1/8カット
約15円
4.氷・消耗品
約10円

原価合計 / 原価率
260円 / 原価率21.7%
計算例②:山崎 NASストレート(販売価格 1,800円)
ジャパニーズウイスキー・ストレート提供
1.山崎 NAS 45ml ※750ml/5,500円
約330円
2.チェイサー(水)・グラス消耗
約10円

原価合計 / 原価率
340円 / 原価率18.9%
計算例③:マルガリータ(販売価格 1,400円)
クラシックカクテル
1.テキーラ(クエルボ)45ml ※700ml/2,500円
約160円
2.コアントロー 15ml ※700ml/4,000円
約86円
3.ライムジュース 20ml
約15円
4.塩・氷・消耗品
約10円

原価合計 / 原価率
271円 / 原価率19.4%
計算例④:カシスオレンジ(販売価格 1,000円)要注意
人気メニューだが原価率が高くなりやすい
1.カシス 40ml ※700ml/2,500円
約143円
2.オレンジジュース 120ml(100%)
約60円
3.氷・消耗品
約10円

原価合計 / 原価率
213円 / 原価率21.3%

販売価格が低いため利益額が少ない。
1,000円→1,200円に変更するだけで原価率は17.8%に改善。

全メニューの原価を一度計算しておくと、利益の見通しが劇的に明確になる。

FL比率:飲食店経営の本当の指標

原価率だけ見ていても、経営の全体像はわかりません。飲食業界で使われる「FL比率」という指標を理解してください。

一人営業BARのFL比率の考え方

一人営業のBARの場合、「L(人件費)」は自分の取り分(役員報酬・給与)として計上します。「自分はタダで働いているから人件費ゼロ」は間違いです。自分の生活費を賄えるだけの報酬を計上しないと、経営の実態が見えなくなります。

原価率を下げる5つの方法

方法 01📏
メジャーカップで1杯あたりの使用量を統一する
最もシンプルで即効性が高い原価管理の方法です。
「目分量でお酒を注ぐ」習慣があると、日によって使用量がバラバラになり、原価率が安定しません。メジャーカップを使って毎回同じ量を注ぐことで、原価が安定します。

使用量1割増の影響
ジン45mlのつもりが50mlになっていた場合:
月200杯提供 × 5ml超過 × (3,000円/750ml) ≒ 月4,000円の原価増
年間では約5万円の差になる。「たった5ml」でも積み重なると大きい。
方法 02🛒
仕入れ先・仕入れ量を最適化する
同じお酒でも、仕入れ先・購入方法によって単価が変わります。
酒類卸業者との取引、まとめ買いによる単価引き下げ、業務用スーパーの活用などで仕入れコストを下げられます。

仕入れコスト削減の具体策
・酒類卸業者と直接取引する(定価より10〜20%安くなることがある)
・よく使うボトルは1ケースまとめ買いで単価を下げる
・業務用スーパーでミキサー類(ジュース・トニック)を安く仕入れる
・複数の仕入れ先を比較して最安値を把握する

安さだけで選ばない
品質の低い素材でカクテルを作ると、味が落ちてリピートされなくなります。
主要なスピリッツは品質重視、ミキサー・消耗品は価格重視と使い分けてください。
方法 03🍋
食材ロスをなくす
カクテルに使うフルーツ・ハーブ・生クリームなどは、
使い切れずに廃棄になることが多い食材です。
廃棄した食材のコストは売上に寄与しないまま原価を押し上げます。

食材ロスを減らす具体策
・ガーニッシュ用フルーツは少量購入・使い切り仕入れを徹底する
・余った食材を使ったオリジナルカクテルをその日の「本日の一杯」にする
・メニューを絞ることで使用食材の種類を減らし、廃棄リスクを下げる
・仕込み量を過去の来客数から逆算して最適化する
方法 04💡
利益率の高いメニューを積極的に提案する
全メニューの原価率を計算すると「これは儲かる、これはあまり儲からない」という差が見えます。
原価率の低いメニュー(利益率の高いメニュー)を積極的に提案することで、同じ売上でも手残りが増えます。

提案メニューを変えるだけで利益が変わる
客がカクテルを迷っている場面で:
「カシスオレンジ(原価率21%)」を提案 → 1杯あたり利益:約790円
「ジントニック(原価率22%)」を提案 → 1杯あたり利益:約940円
→ 1杯あたり150円の差。月200杯なら月3万円の差になる。
方法 05📈
価格を適正に設定・定期的に見直す
原価率を下げる最もシンプルな方法は「価格を上げること」です。
材料費は変わらなくても、提供価格が上がれば原価率は下がります。
仕入れ価格が上がったにもかかわらず価格を据え置いている場合、知らないうちに原価率が悪化しています。

半年に1回は全メニューの原価率を再計算して、価格の見直しが必要かを確認してください。
「昔から同じ価格」が原価率悪化の隠れた原因になっていることがよくあります。

「原価率が低い = 儲かっている」は間違い

ここは重要なポイントです。原価率が低くても、売上が少なければ利益は出ません。

原価率と利益の関係を正確に理解する

原価率20%・月商30万円の場合:
原価:6万円 / 固定費が25万円とすれば → 残り▲1万円(赤字)

原価率25%・月商80万円の場合:
原価:20万円 / 固定費が25万円とすれば → 残り35万円(黒字)

原価率が高くても売上が多い方が、実際の手残りは多い。重要なのは「原価率」より「利益額(売上 - 全コスト)」です。原価率はあくまで管理ツール。最終的に見るべきは手元に残る金額です。

利益を残すための損益計算の基本

月末に「いくら残ったか」を正確に把握するための、シンプルな損益計算シートです。

月次でやるべき原価管理の習慣

月1回やるべき原価管理の4ステップ

  • 月間仕入れ費用を合計する:レシート・請求書を全て集めて月の食材費合計を出す。Squareのデータとあわせて確認する。
  • 月間売上で割って原価率を計算する:仕入れ費 ÷ 売上 × 100 = 当月の原価率。目標は25%以内。
  • 先月と比べて増減の原因を探る:原価率が上がった月は「仕入れが増えたか・廃棄があったか・売上が落ちたか」のどれかが原因。
  • 次月の改善アクションを1つ決める:「来月はカシスオレンジの価格を100円上げる」「仕入れ先を見直す」など、具体的なアクションを決めて終わる。
原価管理は「記録する習慣」から始まる

完璧な管理ツールや会計ソフトは後から導入すれば十分です。まずは「今月の仕入れ費合計と売上を記録する」という習慣だけを作ってください。Excelでも手書きでも構いません。記録が3ヶ月分溜まると、傾向が見えてきます。

原価管理は「完璧なツール」より「続ける習慣」の方が大切。

この記事のまとめ

  1. 原価率 = 原材料費 ÷ 売上 × 100。BARの適正原価率は20〜25%が理想、30%を超えると危険ゾーン。
  2. 全メニューの原価を一度計算する。「なんとなく」ではなく、数字で把握することが出発点。
  3. FL比率(食材原価+人件費)が55〜60%以内なら健全。一人営業は自分の報酬を必ずLに入れる。
  4. 原価率を下げる5つの方法:メジャーカップ徹底・仕入れ最適化・食材ロスゼロ・高利益メニュー提案・価格見直し。
  5. 「原価率が低い ≠ 儲かっている」。最終的に見るべきは利益額(手元に残るお金)。
  6. 月1回、仕入れ費合計 ÷ 売上で当月原価率を計算する習慣を作る。これだけでいい。
  7. 仕入れ価格が上がったら価格を見直す。「昔から同じ価格」が原価率悪化の隠れた原因になる。

一人で悩むより、一度相談してください

開業の失敗は「知識不足」より「相談不足」から始まります。
開業前・開業後どちらでもOK。まず話しましょう。

💬 公式LINEで無料相談する

秘密厳守 / 即日対応 / 相談無料