
「この物件、家賃ちょっと高いけど雰囲気がいいから決めよう」
この決め方が、閉店する店の典型的な入り口です。
家賃は「高いか安いか」ではなく「売上に対して重いか軽いか」で判断するもの。
この記事では、BARの家賃比率の考え方と、物件契約前にやるべき逆算方法を解説します。
家賃比率とは何か
家賃比率とは、月間売上に対して家賃が占める割合のことです。
家賃比率(%)= 月額家賃 ÷ 月間売上 × 100
たとえば家賃30万円、月商300万円のBARであれば、家賃比率は10%。この数字が経営の健全性を測る代表的な指標になります。
⚠️ 計算に含めるべき項目
- 月額賃料そのもの
- 共益費・管理費(毎月固定でかかるため合算するのが実態に近い)
- 自己所有物件の場合は固定資産税相当額
BARにおける家賃比率の目安
| 家賃比率 | 評価 |
|---|---|
| 7%以下 | 優良。かなり余裕を持った経営ができる |
| 8〜10% | 適正。一般的に目指すべき水準 |
| 11〜15% | 要注意。利益を圧迫し始めている可能性 |
| 16〜20% | 危険水域。他の経費を相当絞らないと利益が出ない |
| 20%超 | 開業直後を除き、早急な見直しが必要 |
BARは飲食業の中でも家賃比率がブレやすい業態
・客単価が高い分、坪売上を稼ぎやすい
・一方で少人数営業(ワンオペ〜2名体制)が多く、席数の絶対数が少ない
・深夜営業・立地依存度が高く、好立地ほど家賃も跳ね上がる
この特性上、「一般的な飲食店の10%」をそのまま当てはめず、
自分の客単価・席数・回転率で個別にシミュレーションする必要があります。
家賃比率10%の根拠を数字で理解する
なぜ「10%」という数字が独り歩きしているのか。それは、飲食業の代表的な経費構造から逆算されているからです。
| 項目 | 売上に対する割合の目安 |
|---|---|
| 原材料費(Food) | 20〜30% |
| 人件費(Labor) | 25〜35% |
| 家賃(Rent) | 10%以内 |
| その他経費(光熱費・広告費など) | 15〜20% |
| 営業利益 | 10〜15% |
原材料費と人件費を合わせた「FLコスト」はおおむね60%前後が理想とされます。ここに家賃を足した「FLRコスト」が70%を超えてくると、残る利益が一気に薄くなります。
家賃比率が上がるほど、利益はダイレクトに削られる
家賃比率10% → 利益10〜15%程度を確保しやすい
家賃比率15% → 利益は5%程度まで圧縮
家賃比率20% → ほぼ利益が出ない、または赤字ライン
家賃は固定費です。売上が落ちても金額は変わらない。
だからこそ「上限をあらかじめ決めておく」ことが重要になります。
開業初期は家賃比率が高くなるのが普通
「開業して即10%」を実現できる店はほとんどありません。開業直後は認知度もなく、客数が計画通りに伸びないのが普通だからです。
✅ 現実的な目安
- 開業〜3カ月目:家賃比率20〜25%程度になっても慌てない
- 半年〜1年:口コミ・リピーターが増え、15%前後まで下がってくるのが理想ペース
- 1年以降:目標として10%前後を目指す
大事なのは「今の家賃比率」ではなく「下がっていく見込みがあるか」
開業当初から25%でも、売上が伸びる設計(客単価・客層・立地)が
できていれば問題ありません。逆に「これ以上伸びしろがない箱」で
最初から25%なら、その物件は避けるべきです。
家賃から逆算して目標売上を出す方法
物件を決める前に、必ずこの逆算をしてください。
- 候補物件の月額家賃(共益費込み)を確認する
- 家賃比率10%を基準に、必要な月間売上を計算する(家賃 ÷ 10%)
- 月間売上を営業日数で割り、必要な日商を出す
- 日商を客単価で割り、必要客数を算出する
- 席数・回転率でその客数が現実的に達成可能か検証する
具体例:家賃25万円のBARの場合
家賃25万円 ÷ 10% = 必要月商250万円
250万円 ÷ 25日営業 = 日商10万円
客単価4,000円の場合 = 1日25人の来店が必要
席数10席・回転率1.5回転なら1日15人が限界 → この時点で家賃比率10%は非現実的
→ 客単価を上げるか、席数の多い物件を検討するかの判断が必要になる
このシミュレーションをせずに「雰囲気がいいから」で契約すると、開業後に家賃に追われる経営になります。
家賃比率が高いときの対処法
家賃そのものを下げる交渉以外にも、比率を改善する方法はあります。
| 対処法 | 内容 |
|---|---|
| 客単価を上げる | オリジナルカクテル・ボトルキープ・チャージ設定の見直し |
| 回転率を上げる | 滞在時間の適正化、混雑時間帯の座席運用の工夫 |
| 他の固定費を削る | 光熱費・通信費・サブスクツールの見直しでFLR全体を圧縮 |
| 営業日・時間を見直す | 閑散曜日の休業、逆に稼げる曜日の営業時間延長 |
| 家賃交渉 | 更新のタイミングで管理会社・オーナーに減額交渉 |
家賃だけを見て一喜一憂しない
家賃比率が多少高くても、原材料費・人件費を含めたFLR比率が
70%以内に収まっていれば経営は成立します。
「家賃10%教」に縛られすぎず、全体のバランスで判断してください。
物件を選ぶ前にチェックすべきこと
- 表示されている賃料に共益費・管理費が含まれているか
- 契約時の敷金・礼金・保証金の総額(開業資金への影響が大きい)
- 契約から開業までの「無収入期間」の家賃負担(内装工事期間も家賃は発生する)
- 同エリアの坪単価相場と比較して割高でないか
- 深夜帯の人通り・視認性(BARは日中の人通りより夜間動線が重要)
この記事のまとめ
- 家賃比率=月額家賃÷月間売上×100。BARも含め飲食業全体で10%前後が目安とされる。
- BARは客単価が高い分、坪売上を稼ぎやすいが席数が少ないためブレやすい業態。
- 家賃比率が上がるほど利益は直接圧縮される。
- 20%を超えると赤字ラインに近づく。 開業初期の家賃比率20〜25%は珍しくない。重要なのは「下がる見込み」があるかどうか。
- 物件契約前に家賃から目標売上・日商・必要客数を逆算し、現実的に達成可能か検証する。
- 家賃だけでなく原材料費・人件費を含めたFLR比率全体でバランスを見ること。
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